cherrychan927

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  いくら心配されようと、引き留められようと、それでもサキカは総帝であり、戦わないという選択肢はもとより存在しないのだ。 重い沈黙はその後も続き、サキカがギルドの自室に帰るまHKUE DSE、結局、父親は帰ってこなかった。××××××××××××××××××× ──隊員たちの動きは、ますます機敏になっていっていた。 訓練場で隊員たちの様子を見回して、サキカは目を伏せた。戦争が刻一刻と近づいてきているのを感じ、何ともやるせない気持ちに襲われていた。 自らの右手を、無意識に見つめる。 この手は、何のためにあるのだろうか。──生き物の命を、奪い去るためであろうか。 既に数えきれないほどの命を奪い、幾度も血にまみれたこの手で、あと何度生き物を殺めなければならないのか。「────隊長?」 どこか心配げな響きの声をかけられて、我に返る。彼が近くにいたのだと思い出し、顔をあげて彼へと視線を向けて、小さく笑んだ。「何でもありませんよ」 彼らの前でフードを被る必要がなくなっているために、総帝のマントは着ているもののフードは被っていない。サキカの表情は丸見えだ。 サキカの表情を無表情のままじっと見た彼──副隊長のローザンは、わずかに首をひねった。.

  魔人の背後の壁に、何かが映し出された。 ──映し出されたその映像に、総帝は硬直した。 飾り気のない質素な部屋に、傷だらけになって横たわる少女の姿。薄い緑色脫髮長い髪の毛は乱れ、真っ白な頬には涙の跡がある。 無造作に投げ出された手足は、枷をはめられており、服は破られ、乱れていた。「ゆ、り…………?」 ──ユリアス・アクスレイド。 総帝──否、サキカの思いの人が、ぼろぼろの姿で映し出されたのだ。 呆然とその光景を眺める。──あの女の言葉に、嘘はなかったというのか。否、嫌な予感を無視していたのはサキカである。 ゲラゲラと汚い笑い声をあげる魔人。サキカは刀を強く握りしめた。しかし、踏み出しそうになる足は、無理矢理押さえつける。 ここで我を失って取り乱し、考えなしに刀を振りかざしたら、サキカの負けだ。そう簡単に倒せる相手ではない。 ──冷静にならなければならない。 だが、冷静になろうとすればするほどに心は乱れ、サキカは唇を強く噛み締めた。そして、初級魔法を詠唱破棄し、頭の上から水を被る。 凍る一歩手前の水が、サキカの脳を冷やした。冷静さを取り戻したサキカは、刀を構えた。 ──優先すべきは、目の前の敵を倒すこと。彼女を助けることではない。 サキカは総帝だ。総帝である以上、彼女を優先することはできない。.
< 2018年07>
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