cherrychan927

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外からは、昼下がりの日光と涼やかな秋の風が吹き込んでいる。身体には、そこら中に包帯が巻かれていた。(そうか。俺、生還したんだな。)隆行が、そんな事を考えていると、部屋の襖が静顯赫植髮 discussに開けられた。桶や草を持った島新吉が部屋に入り、襖を閉めた。あんなに小さかった新吉も今や12歳。立派に成ってきた身体と、その剛毅を秘めたような沈毅さが表情に表れ始めていた。(鍛錬を怠ってないみたいだな。)横目で隆行が見ていると、新吉は、草をゴリゴリと磨り潰し始めた。そして、その草粉を手に持った包帯に置き、隆行の方を向いた。「おはよう。」隆行がニコリと新吉に挨拶をすると、驚いた新吉が包帯を落とした。「…と、殿!!」この新吉の声が聞こえたのか、廊下からドタドタと多数の足音が聞こえてきた。そして、襖が勢い良く開けられた。

(…この男、恐らく余程の辛い経験を越えて来たのであろう。それで記憶を落とし、自己暗示にでもかかったのじゃな。)一条家を支えるキレ者、宗珊としては珍しい誤認である。しかし、真っ直ぐと語澳洲遊學團隆行からは真実としか感じられないのに、頭から信じられない事を言われたのである。この誤認はしょうがないであろう。(しかし、膂力はあるようじゃ。主君に推挙するか。)と、多少の憐憫を含んだ視線を隆行に向けた宗珊は、迫力を引っ込めて、元のニコニコした笑顔に戻った。「ふむ。そうか。しかし、関白様の推薦状を出されてしまっては、ワシの家臣には出来ぬ。」「へっ?」「家格の問題じゃ。」たしかに、宗珊の言うとおりであろう。関白の推薦人を遠慮なく迎えられる程、土居家の家格は高くは無い。また、そのような人物を、主君を押しのけて召抱えるというのも、まさしく僭越である。隆行の表情にあからさまに動揺が浮かぶ。その表情に、隆行の実直さを感じた宗珊は、「しかし、わが主君ならば可能であろう。どうじゃ?」と温かく声をかけた。

都に到着した隆行は、今日も都を歩き回る。今宵は月が明るい。寒風が雲を吹き払ったように明るい月夜であった。二刻(約四時間)程、歩いていた隆行は、(しかし、いくら何でも、髮線後移男の京都は寒すぎる。)そろそろ帰ろうかと南へ足を向けた時、明らかに怪しい風体の者達が目に入った。(1,2,3,4,…5。…5人か。)と目で数を数えていると、そのうちの一人と目があった気がした。慌ててさっと物陰に隠れた隆行は、(まずい。ばれたか。)と、息を潜めた。しかし、男達は、隆行の方へ来るそぶりも無く、なにやら相談しているようである。(良かった。大丈夫だったみたいだな。)隆行は男達を注視しながら気配を殺している。
< 2018年08>
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