cherrychan927

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 「え! ぎきょ……って、どっちが兄貴よ?」聞き返すのはそこなのか、と思ってしまった。既にそのことをサキカかもしくは冬也の口から聞かされていた有舞とリリス以外の四脫髮問題は、静かに成り行きを見守っている。「……俺の方が誕生日早いから、俺が兄なのかな」自分と冬也の誕生日を思い出して呟いたサキカに、レイトが興味津々といった様子で訊ねた。「なあ、サキカの誕生日って何時なんだ?」「…………第四の月の二日」「すげぇ、学年最速っ!」一年は12ヶ月、365日。月は第一の月から始まり、第十二の月まである。因みに中央の国の季節は、第三の月から三ヶ月が春、第六の月から三ヶ月が夏というようになっており、今日の日付は第七の月の二日だ。「ってことは、サキカが転入してきた時は既に十六歳だったってこと?」「うん、そうなるね」ふぅん、と有舞は興味があったともなかったともとれる微妙な相づちを打つ。「それで、……皇太子様は?」「文月十五日……、第七の月の十五日」ジパング語で呟いてからオルス語で呟いたサキカ。特に意味はないのだが、冬也自身から誕生日を聞いたときの受け答えを思い出して、冬也からの答えを何となく呟いたのだ。「なるほど、誕生日的にはサキカの方が兄なんだな」レイトが納得したように頷いたが、それはどういう意味なのか。中身は――もしくは外見は冬也の方が歳上に思われると言うことなのだろうか。自分の性格はそこまで子供じみているとは思わない。――思いたくない。冬也はといえば、見た目とは裏腹に穏やかだ。サキカの外見は中性的で性別がわかりづらい顔立ちをしているとはいえ、童顔ではないはずだ。冬也のあの鋭い目は、鋭利なように見えて実は優しさを含んでいるとサキカは知っているが、はたからは目付きが鋭く歴戦の騎士のように見えているのかもしれない。.

 冬也のことを調べる権利は、本当にないのかもしれない。しかし、それを彼に近付こうとしない理由の一つにしていたのは確かだ。自分の顔から表情が消え失せるのをかんじた。HKUE DSE俺は……、僕は、本当に弱い人間なのですよ。常に現実から目を背けて、ユメだけを見ている」着飾らない口調で、言葉を紡ぐ。――それは、彼女に本当の自分を知って貰いたいから。弱い自分を何度見ても、サキカに呆れたりせずにこうして声をかけてきてくれる彼女に。……サキカが、初めて好きになった彼女に。――――学園生活は、甘い甘い夢。覚めた時は使命を果たさなければいけない夢。ゼウスにはそこまで自分を追い詰める必要はないと諭されたが、それでもサキカの使命が消えることはない。遥か遠くに浮かぶ東の国の本島を、目を細めて眺める。――身体も心も傷付けてしまった親友に思いを馳せ、サキカは静かに目を伏せた。「……サキカ君――」「――――これは、」サキカは、何か言おうとしたユリアスを遮った。彼女のことだ、きっと優しい言葉を口にしようとしたに違いない。しかし、今はそれに甘えて良いときではないのだ。「これは、いずれ……、僕がどれだけ逃れようともがいても、いずれは向き合わなければならないことですから」今ここでこの問題から逃げようと思えば、できなくはない。頭が痛いだの熱っぽいだのと適当に理由をつけて、中央の国へと帰るかもしくはずっと宿に居続けるかすればよいのだ。それをしないのは、いい加減問題に向き合うべきだとわかっており、逃げたところで絶対にいつかこの問題と向き合う日が来るとサキカの勘が告げているからである。.
< 2018年05>
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