冬也のことを調べる権利は、本当に
冬也のことを調べる権利は、本当にないのかもしれない。しかし、それを彼に近付こうとしない理由の一つにしていたのは確かだ。自分の顔から表情が消え失せるのをかんじた。HKUE DSE俺は……、僕は、本当に弱い人間なのですよ。常に現実から目を背けて、ユメだけを見ている」着飾らない口調で、言葉を紡ぐ。――それは、彼女に本当の自分を知って貰いたいから。弱い自分を何度見ても、サキカに呆れたりせずにこうして声をかけてきてくれる彼女に。……サキカが、初めて好きになった彼女に。――――学園生活は、甘い甘い夢。覚めた時は使命を果たさなければいけない夢。ゼウスにはそこまで自分を追い詰める必要はないと諭されたが、それでもサキカの使命が消えることはない。遥か遠くに浮かぶ東の国の本島を、目を細めて眺める。――身体も心も傷付けてしまった親友に思いを馳せ、サキカは静かに目を伏せた。「……サキカ君――」「――――これは、」サキカは、何か言おうとしたユリアスを遮った。彼女のことだ、きっと優しい言葉を口にしようとしたに違いない。しかし、今はそれに甘えて良いときではないのだ。「これは、いずれ……、僕がどれだけ逃れようともがいても、いずれは向き合わなければならないことですから」今ここでこの問題から逃げようと思えば、できなくはない。頭が痛いだの熱っぽいだのと適当に理由をつけて、中央の国へと帰るかもしくはずっと宿に居続けるかすればよいのだ。それをしないのは、いい加減問題に向き合うべきだとわかっており、逃げたところで絶対にいつかこの問題と向き合う日が来るとサキカの勘が告げているからである。.