「え! ぎきょ……って、どっちが
「え! ぎきょ……って、どっちが兄貴よ?」聞き返すのはそこなのか、と思ってしまった。既にそのことをサキカかもしくは冬也の口から聞かされていた有舞とリリス以外の四脫髮問題は、静かに成り行きを見守っている。「……俺の方が誕生日早いから、俺が兄なのかな」自分と冬也の誕生日を思い出して呟いたサキカに、レイトが興味津々といった様子で訊ねた。「なあ、サキカの誕生日って何時なんだ?」「…………第四の月の二日」「すげぇ、学年最速っ!」一年は12ヶ月、365日。月は第一の月から始まり、第十二の月まである。因みに中央の国の季節は、第三の月から三ヶ月が春、第六の月から三ヶ月が夏というようになっており、今日の日付は第七の月の二日だ。「ってことは、サキカが転入してきた時は既に十六歳だったってこと?」「うん、そうなるね」ふぅん、と有舞は興味があったともなかったともとれる微妙な相づちを打つ。「それで、……皇太子様は?」「文月十五日……、第七の月の十五日」ジパング語で呟いてからオルス語で呟いたサキカ。特に意味はないのだが、冬也自身から誕生日を聞いたときの受け答えを思い出して、冬也からの答えを何となく呟いたのだ。「なるほど、誕生日的にはサキカの方が兄なんだな」レイトが納得したように頷いたが、それはどういう意味なのか。中身は――もしくは外見は冬也の方が歳上に思われると言うことなのだろうか。自分の性格はそこまで子供じみているとは思わない。――思いたくない。冬也はといえば、見た目とは裏腹に穏やかだ。サキカの外見は中性的で性別がわかりづらい顔立ちをしているとはいえ、童顔ではないはずだ。冬也のあの鋭い目は、鋭利なように見えて実は優しさを含んでいるとサキカは知っているが、はたからは目付きが鋭く歴戦の騎士のように見えているのかもしれない。.