cherrychan927

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彼にされるがままに

2021年07月18日

 彼にされるがままに身体を拭かれ、パジャマを着せられ、髪を乾かしてもらった。

 恥ずかしいのはやまやまだが、抵抗できる力が残っていない。

 寝る準備万端でベッドに下ろされた時には、瞼が重くなっていた。

「楽?」

 悠久の肩に頭を載せて目を閉じていた私は、ほんのわずかに瞼を持ち上げた。

「やっぱり、ちゃんと部屋を借りて暮らさないか?」

 ウィークリーマンションを更新するかを相談した時、悠久は仮住まいではなくアパートかマンションを借りて腰を落ち着けたいと言った。

 それでも、ウィークリーマンションを更新したのは、私が望んだから。

「違う場所に……行きたくなるかも――」

「――その時はその時でいいだろ」

「長い旅行気分でいいじゃない」

 悠久はそれ以上何も言わなかった。

 私は彼の鼓動を聞きながら、瞼を閉じた。



 ごめんね、悠久。




 悠久の気持ちは嬉しい。

 二人の居場所を作ろうとしてくれている。

 けれど、私はそれを作るのが怖い。

 帰る場所が出来てしまったら、帰れなくなった時がツラいから。

 間宮の家がそうだった。

 あの家は私にとって、悠久との思い出の場所で、帰るべき場所。

 だから、間宮の家で一人で暮らすのは苦しかった。

 この世に一人きりなのではと錯覚してしまうほどに孤独だった。

 そんな場所を増やしたくない。

 今の私たちに必要なのは場所じゃない。

 二人が手の届くところに存在すること。



 悠久の腕の中が、私の居場所だから……。



「いつか、あの家に帰ろ……?」

 意識を手放す直前、とても小さな声で呟いた。 

『不自由はないかい?』

 いつもと変わらない穏やかな声に、私はホッとした。

「大丈夫です」

『どんな小さなことでも、困ったことがあれば、言うんだよ。明堂さんは嫌がるかもしれないけれど、俺はどんなことでもするからね』

「ありがとうございます」

 私と悠久のことを認めて、力になると言ってくれる修平さんの存在は、救いだ。

 ウィークリーマンションで暮らし始めてすぐに、修平さんに居場所を知らせたいと言ったら、悠久はムッとした表情を見せた。

 私が修平さんと会っている写真を見せられていた悠久は、修平さんが今も私に未練を残していると思っていた。

 私は、修平さんの言葉に背中を押されて、励まされて、悠久と離れていた時間を耐えていたのだと話した。

 渋々だったけれど、修平さんに居場所を伝えることを了承してもらい、それからこうして、週に一度くらいだけれど、連絡をしている。

 悠久に心配する必要も、嫉妬する必要もないことをわかってもらうために、彼の前で。

 今も、悠久はダイニングでコーヒーを飲みながら、こちらを見ている。

『来週、お祖母さんの誕生日だろう?』

「あ、そうですね」

『ようやく、相続関係も落ち着くから、そうしたら少し仕事を休もうと思うんだ』

「体調が悪いんですか?」
『いや。浩一との時間を持とうと思ってね。旅行もいいかもしれないな。北海道に行ったら、顔を見せてくれるかい?』

「もちろんです」

『ありがとう。新学期の前にでも行けるように調整するよ』

 また連絡すると伝えて、電話を切った。

 私が見ると、悠久が視線を逸らした。

「修平さんが北海道に来るかもしれないって」と、報告する。

「楽に会いに?」

「ううん。お子さんと旅行だって」

「え……?」と、悠久が目を見開いて私を見た。

「子供?」

「うん」

 私は修平さんとの離婚の経緯を詳しく話した。浩一くんのことも。

 なんとなく、言う必要はないと思ってきたけれど、今は話してもいいかなと思うようになっていた。

 私が今も修平さんと連絡を取り合うのは、未練のような男女の情からではなく、性別を超えた家族としての情と、修平さんの贖罪の気持ちからだとわかって欲しいから。

「あとは……おばあちゃんの為だと思う」

「おばあちゃんて、亡くなった?」

「うん。おばあちゃんが結んでくれた縁を守れなかったことを、修平さんは気にしてるんだと思う」

「それだけで、離婚した後もこんなに気にかけるか?」

「とても一途で義理堅い人だから……」

「ふーん」

 不機嫌さが滲み出る声に、私は顔を上げた。

「離婚したのに縁が切れてないのって、なんかムカつくんだけど」

 そう言うと、悠久は立ち上がり、私の隣に腰を下ろした、そして、ぎゅうっと私を抱き締める。

「俺だって一途だから」
  


「このままずっと

2021年07月18日


「このままずっと、楽と繋がっていたいな」

 私のを埋め尽くした悠久が、熱い息を吐きながら言った。

「私も……」

 私はかすれた声で答える。



 私も、このままずっと悠久と繋がっていたい……。



 揺さぶられ、言葉にならない想いを、心の中で呟いた。

「ん……っ」

 シーツを掴む私の左手の指と彼の指が交差する。

 指と指を絡め、しっかりと握る。

 押し寄せる快感の波に身を捩ると、薬指に光るピンクダイヤたちが目に入った。

 札幌で一緒に暮らしてひと月が過ぎた。

 一昨日から私の指にはピンクダイヤが輝いている。

「楽――っ!」

 悠久が苦しそうに私の名を呼ぶ。

 ギュッと目を瞑って、身構えた。

 身体の中心から足のつま先目掛けて電気が走る。思わず爪先がピンと伸びた。

「あっ、ああっ……!!」

 初めて抱かれた夜から、こうして毎晩、悠久は私を抱く。

 お互いが確かに腕の中に存在しているのだと、確かめるように。

 互いの熱や汗の匂い、重み、瞳の奥に揺れる自分の姿。

 全身と全神経で互いを感じ、ようやく眠りにつく。

 それでも、ほんのわずかな時間でも、姿が見えないと不安になる。

 タガが外れたなんて言葉では表現できないほど、互いを求め合っていた。

 その証拠に、先にベッドを出てシャワーを浴びる私を追ってきた悠久は、壁に手をつくようにと言った。

「悠久! こんなところで――」

「――ダメ?」

 背後から両胸の先端を摘ままれ、足の付け根には硬くなった彼を押し付けられた。

 彼の切っ先が昨夜の余韻を残す蜜口や、その上の膨らみに擦りつけられ、その度に私の腰も揺れる。


「だめぇ……」

 バスルームに自分の嬌声が響き、恥ずかしくなる。

 私たちの横からシャワーが音をたてて飛沫を吐き出し、私たちの身体に跳ねる音と共鳴するけれど、それでも私の声の方が響く。

 壁の向こうの隣室は、今は空室のはず。

 そうはわかっていても、こうしたウィークリーマンションはいつ誰が入居して、いつまで住むのかもわからない。

 昨日までは出張中のサラリーマンで、明日からは地方からやって来た就活生が住んでいるかもしれない。

 とにかく、この瞬間も絶対に空室とは限らないのだ。

「お願――い……」

「ん? 挿れて欲しいの?」

「ちが――っ!」

 片手が胸を下りて茂みの奥に到着すると、二本の指で膨らみを挟み、上下に撫で始める。

「ひゃ……んっ」

 時折円を描くようにも撫でられ、その気持ち良さに立っているのがやっと。

「あっ、ああっ!」

「声、響くよ」

 背後から耳元に囁かれ、背を仰け反らせた。その拍子に、私の腰が彼の下腹部に押し付けるような格好になる。

「そんなことしたら――」と言うと、悠久の唇が私の耳朶を食んだ。

「――挿入っちゃ……た」

「あーーっ!」

 いつもとは違う角度に、身体が悦ぶ。

「あんっ! あ――」

 もう片方の手が胸から離れ、掌で私の口を覆った。

「思いっきり啼かせたいけど、誰にも聞かせたくない」

 そう言うと、悠久の腰が引けて、勢いよく押し付けられた。

「んっ――!」

 最奥を穿たれ、腰が震える。

 ザーッとシャワーの水音、クチュクチュと蜜が滴る水音、チュッと彼がうなじに舌を這わせる水音。

 どれを取ってもいやらしくて甘美。
「は……る――」

 口を覆っていた手が外され、その手で顎を掴まれて首を回すと、食べられてしまうような深いキスを受ける。

 必死でキスに応えながらも、打ち付けられる楔に身体が痺れ、絶頂へのカウントダウンに身構えた。

 自分でも恥ずかしいほど、彼を離すまいと締め付けているのがわかる。



 今、願いを口にしたら、彼は応えてくれるだろうか……。



 札幌に来てから、彼に抱かれる度にそう思っては、飲み込んできた言葉。

 驚くだろうか。軽蔑するだろうか。喜んでくれるだろうか。

 なけなしの理性が葛藤し、今日もその言葉を飲み込んだ。

 代わりに、咥内で暴れる悠久の舌をじゅっと吸った。

 彼の両手が私の腰をきつく抱く。



 このまま、離さないで――。



 そう願った瞬間、彼は私の腰を掴んだまま腕を伸ばし、腰を引いた。

「く……っ」

 微かに彼の呻きが聞こえたと同時に、私の足元に白濁が飛んだ。

 私はずるっとその場に座り込む。

 はぁはぁと胸を上下させて体内に酸素を供給した。

「大丈夫か?」

 私は壁に向かったままで頷く。

 悠久もしゃがみ、後ろから私を抱き締めた。

「盛ってばっかでごめん」

 私は首を振る。

「いいの……。嬉しいから」

 ようやく呼吸が安定し、私は首を回して悠久を見た。

「けど、今はちょっと立てないみたい」

 腰が抜けたというか、痺れたというか、力が入らない。

 悠久は気まずそうに苦笑いすると、私を抱き上げてバスルームを出た。
  


" 普通、支配階級は誘拐の危険性を鑑みて学校に通ったりはしないだろうに、この学園なら学園長の防御魔法があるから問題ない、という判断なのだろうか。
それとも俺にすら気付かせず、護衛が居たりするのか。company registration service hong kong

「……ハスキメル、って、長いよな」

最後の考えは、考えた直後に否定する。
地理の把握に人間観察と、俺は結構な濃度で気配を探ってる。
それでカケラも気付かないなんて、有り得ない。

「そうか?なんなら呼び易いように縮めてくれて構わない」
「いいんだ?んじゃ、ハルとか」
「……最初と最後か?」
「そう」

普通はハスク、辺りが無難なんだろうか。
短いなら何でもいいのでより短い方にしてみたが、本音を言えば何でも良かった。

「ハル、か。初めて呼ばれたな。うん、それでいい」

かなり適当な決め方だったが、何気に気に入ったらしい。
満足そうに頷くハルに、ちょっと笑った。

うーん、なかなか。
支配階級にしては、慢りもなく面白い。

どうやら、隣の席の奴とは良好な関係が築けそうだった。

こうなると出来れば前の2席の奴らともそれなりの関係が作れると有り難いんだが、果たしてどんな奴が来るか。
まあ、あまりお近付きになりたくない奴が来たとしても、まったく気にしない自信はあるのだが。

ハルと他愛もないことを話しながら、そんなことを思う。
すると席が半分程度埋まった辺りで、ハルの前、俺の斜め前の席に1人の女子生徒がやってきた。
何も言わず、すとんと席に座る。

俺たちは何となく話を止めて、軽く彼女を見やった。

真っ先に目に入ったのは、特待生を示すベレー帽。
金ではなく黄色の髪が、真っ直ぐストレートに伸びている。
入学式の人間観察で、気になった人間の1人だった。

唯一観察前に「面白い」と断定した奴とは違い、それなりに優秀だとは思うが、そういう意味では気になる程ではなかった。
それなのに気になったのは、こいつの気配が、この世界では初めて感じる気配だったからだ。

周りの「人間」と、何か違う。
だがもちろん、「魔物」の気配でもない。

「魔族」とは会ってないが、これは魔物に近いと聞いた。なら、これもない。

これは話し掛けてみるしかないか、と口を開き掛けた時、先に隣が声を発した。

「もしかして、ツァイ・ユーノトール?」

しかも、彼女の名前を知ってるらしい。
皇族に名前を覚えられてるってことは有名なのか、それとも知り合いなのか。"  


"「……強いね。滋賀学院、すごいチームだ」

 桔梗が伊香保に呟いた。

「うん、私たちより甲子園に行くために3年間頑張ってきたチーム。当然よね……。祈るしか、応援するしかないわ」

 桔notary public service in hong kongと伊香保が手を組んで祈った。祈る先に汗を拭う白烏がいる。目を移すと、神妙な面持ちで打席に入る滋賀学院の西川の姿が見えた。相手も四番。道河原の打席とあまりにも酷似している。
 普通ならば、ホームランを意識して当然だ。だが、西川は仲間を信じた。確率の低いホームランを狙うより、確実なヒッティングを選んだのだ。
 白烏が投じた初球を西川は狙っていた。おそらく長打警戒のボールになる。外角へ放ってくるのは間違いない。西川の冷静な判断が勝った。しぶとくバットに乗せた白烏のスライダーをライト前へ運ぶ。悲鳴にも似た歓声がますます大きくなった。

 セカンドランナーは本塁へ返れなかったが、これでノーアウト満塁。滋賀学院側のスタンド、ベンチはもう総立ちだ。
 西川と二塁上の川野辺が共に目を合わせ、大きく頷きあった。やはり、この二人を迎え、簡単には終わらせてくれない。

 ただ、川野辺、西川、才雲以外には白烏は打たれていない。ここからの五番打者からは甲賀バッテリーの方が有利かと思えた。"  


"「副島さん、肩に力入ってますわ。楽に楽に」

 月掛が声を掛ける。

 副島? その名前に資定は小さな反応を見せた。確か数年前に命を絶ったあの選手も同じ名前だった。大伴家にオーバーラップする雄性禿の選手は、ずっと資定の頭の中に残っている。

 打席に入る前、副島は空を見上げた。
 俺にできることは、何だ。
 ここ数ヶ月、ずっと副島は自問してきた。野球の経験は間違いなく上だが、運動能力はこいつら忍者たちの方が遥かに高い。自分が五番打者でいる時間もあとわずかだろうと思っている。みんなが集まってくれて、こんなに可能性に溢れる奴らが集い、もしかしたら本当に甲子園の切符を取れるかもしれない。野球を教えたらみんなスポンジのように吸収していく。野球を教えきったら、俺はこのチームに必要だろうか? 最近、ときどきそう思うのだ。
 兄貴、甲子園にいくために、俺は何ができるだろう? 何の変哲もない普通の高校を甲子園での全国制覇に導いた兄は、ずっとずっと副島の憧れだ。兄貴はどうやってあの風景を作り出したのだろう。

 資定は少し間を取った。
 さっきの四番は普通じゃなかった。対して、この五番はそんな雰囲気は感じない。普通に投げれば、おそらくバットにかすりもしないだろう。それなのに、資定は間を取った。何故この何の変哲もないこの五番バッターに自分の神経が警戒したのか、分からなかった。"  


とたんに小船が大きく揺れ始め、顔葉が落ちないよう足を踏ん張りながら、「少しは骨があるようだな。」と、たっつんに掴みかかりにきた。しかし、たっつんは、体当たりの反動を活かし、そ顯赫植髮評價まま後転するように後ろに倒れると、顔葉の手をくぐり抜けながら蹴りの連打を顔葉に与えた。それでも、倒れず足を踏ん張っている顔葉に、たっつんは、揺れる船の上で得意の不規則な動きを始めると、拳や蹴りの連打を浴びせた。そして、たっつんが、踏ん張っている顔葉の足を集中的に攻撃していると、波が小船を大きく揺らし、バランスを崩した顔葉が海へ落ちていった。しかし、顔葉も海賊である。落ちても泳いで小船に戻ってくる。たっつんは、戻ってくる顔葉に、船の縁から攻撃を続けた。そして、顔葉が、海面に顔出そうとすると、すぐさま攻撃し、再び沈めるたっつんの行動に、いつしか、顔葉も暴れるように海面へ向かってくるようになってきた。たっつんは、そんな顔葉に容赦なく攻撃を浴びせ、顔葉に息を吸う余裕を与えないよう、執拗に顔葉を沈め続けていると、ついに顔葉が浮かんでこなくなった。そこに至って、(勝った!!)と確信したたっつんは、疲れきった身体のまま海に飛び込んでいった。  


これに合わせて、自然と鑑理の顔も綻(ほころ)んでいく。唯一、表情を変えない宗珊は、「息子の非礼、失礼致しました。」と、道雪と鑑理に頭を下げた。「いえいえ、これくらい何HKUE事はございませぬ。いや、しかし、思うた以上に、大きな御仁でございますな。腕の太さだけでも、当家に敵う者はおらんでしょう。」道雪は隆行の無骨な外見に好感を抱いたらしく、「立派な後継ぎではございませぬか。子の無い某から見れば羨ましい限りですぞ。」と、宗珊に向かって言葉を返す。このような雰囲気で始まった双方の家の重臣同士の会合は、なんといっても、同盟関係の締結が一番の議題である。初対面の隆行のために、お互いの紹介をすると、軽い世間話をして、早速本題に入った。「さて、婚姻関係を結ぶ事につきましては、当家でも評定で決定致しましたが…」と語り出した道雪は、「日取りにつきましては、明年でも宜しいでしょうか?」と宗珊に質問を向けた。道雪の話し振りから、最早、婚姻は内定も出ており、残るは、詳細を詰めるのみである。  


その言葉に半身を起こした景虎は、横にいる隼人を睨み、「なんじゃ、何が言いたい。」語気が荒くなる。隼人は、そんな景虎など視界に入らないかのように、横になったまま口を開くと、diploma 課程「ヌシは、越後の民が良けりゃ、それで良いのか。この佐渡の民を見たか?一生懸命、真っ当に生きてきた奴らの痩せ細って諦めた眼を見たのか?」景虎に問いかけ始めた。「むぅぅ。」と唸る景虎は、再び横になると、「隼人、ほりゃぁ、ワシだって少しでも皆を笑顔にしてやりたい。じゃが、物には限度があるんじゃ。それに人も千差万別じゃ。悪どい奴の方が多いくらいじゃ。」と言った。国主としての日々が身にしみているのであろう。その言葉には、諦めと葛藤(かっとう)の混じったような真意が篭(こも)っていた。景虎の言葉を聞いた隼人は、半身を起こし、景虎を見据える。「おぃ。それをどうにかするために、ヌシの出した答えが、戦に負けずに勝ち続ける事か?」「あぁ。戦に勝ち続ければ、力が増す。人も増える。力が無ければ、民を守れぬし、人も付いてこぬ。」「ほぉぅ。」大仰(おおぎょう)に頷く隼人は、そう言って再び横になると黙って景虎に背中を向けた。  


隆行が領民に返事を返しながら待っていると、屋敷の玄関の方から新吉が転げるように出てきて、片膝をつき、「殿をお待たせしてしまい、誠に申し訳ございません!」と、凄い勢いで謝り始めた。beautyexchange隆行は予定より早くから待っていたので、待つのは当然と思っていたくらいなので、「良い。良い。ヌシが一番早く来たぞ。」その強面を緩め、柔らかく声をかけた。すると、再び玄関から男達が駆け出してして、皆、隆行の前に膝を付き、遅参を謝り始めた。隆行は大きく笑ってから、「謝るのはワシの方じゃ。皆の事を考えず早く来過ぎた。さぁ、立て。淡路島へ向かうぞ。」そう言って皆を立たせると、道の方を向いた。全員徒歩、計7名の小さな集団である。「隆行様、旅ですかぃ。気をつけて、早く戻ってきて下させぇよ。」「きゃぁ、隆行様!おはようございます!」領民に声をかけられながら進む、この集団は、中村御所を出ると、北を向いた。長宗我部家や本山家などの強豪がいる東での、不慮の事故は避けたい。その想いが進路にあらわれていた。  


外からは、昼下がりの日光と涼やかな秋の風が吹き込んでいる。身体には、そこら中に包帯が巻かれていた。(そうか。俺、生還したんだな。)隆行が、そんな事を考えていると、部屋の襖が静顯赫植髮 discussに開けられた。桶や草を持った島新吉が部屋に入り、襖を閉めた。あんなに小さかった新吉も今や12歳。立派に成ってきた身体と、その剛毅を秘めたような沈毅さが表情に表れ始めていた。(鍛錬を怠ってないみたいだな。)横目で隆行が見ていると、新吉は、草をゴリゴリと磨り潰し始めた。そして、その草粉を手に持った包帯に置き、隆行の方を向いた。「おはよう。」隆行がニコリと新吉に挨拶をすると、驚いた新吉が包帯を落とした。「…と、殿!!」この新吉の声が聞こえたのか、廊下からドタドタと多数の足音が聞こえてきた。そして、襖が勢い良く開けられた。  


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